投資をおこなう前に知っておきたい金融商品取引法

お金のやり取りが主流となる資産運用では、通常の商取引よりもより厳密な運用をすることが求められますが、その大元となるのが「金融商品取引法」です。この金融商品取引法とはどのような法律なのでしょうか。
成り立ちから現在に至るまでと、目的とするものを見てみましょう。
金融商品取引法の目的
金融商品取引法は「国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資すること」を目的として、1948年に制定され2006年に大規模改正がおこなわれて現行の形になりました。
2006年の大規模改正では、
- 株式・公社債・信託受益権などの有価証券の発行や売買
- デリバティブ取引の開示規制
- 業者規制
- 不公正取引規制
- 取引所規制
- 関連するエンフォースメントなどを規定
をおこなうことを目指しました。
金融商品取引法において規定されたルールは、インサイダー取引に代表される不正取引を排除する規制や、有価証券や有価証券関連法人の開示に関する条文も含まれています。また、株式の公開買付制度(TOB)など株式の大量取得ルールに関しては、改正時期のTOBの盛りあがりを反映して、開示報告の義務付けなど一定のルールを定めました。この他、有価証券をはじめとする各種金融商品を取りあつかう金融商品取扱業者についても、それぞれ取り扱いを個別に定めています。
このように広範な金融取引に関する規制法として改定された金融商品取引法ですが、実際の取引は金融商品取引法だけではなく、関連各種法律や取引所の規則、市場に存在する暗黙の商慣行なども影響します。
実際の取引では、金融商品取引法だけではなく、これらの法律や規則、商慣行も守る必要もあります。
2006年の大規模改正とその概要
このように2006年の改正によって、金融取引に関する包括的な法律となった金融商品取引法ですが、この改正以前は「証券取引法」という証券取引に関する規制法でした。しかし、2006年3月に証券取引法以外の金融商品に関する各種法律を統合することを目指した「証券取引法等の一部を改正する法律」が提出され、6月に成立しました。これに合わせて名称が「金融商品取引法」に改題され、2007年9月に施行されることとなります。
2006年の改正では先にも触れたように、
- 投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な制度の整備
- 公開買付に関する開示制度や大量保有報告制度の整備
- 四半期報告制度の導入
- 財務報告に係る内部統制の強化等に関する制度の整備
- 開示書類の虚偽記載及び不公正取引(インサイダー取引)の罰則強化
などが重点的な改正対象として扱われました。
2006年の改正では、バブル景気とその崩壊による長期停滞からの脱却を目指し、1980年代のイギリスの金融制度改革(金融ビッグバン)を参考に1990年代後半の「日本版金融ビッグバン」と呼ばれる金融システムの改革・再編が念頭に置かれました。
「日本版金融ビッグバン」とは、
- 投資家・資金調達者の選択肢の拡大
- 仲介者サービスの質の向上及び競争の促進
- 利用しやすい市場の整備
- 信頼できる公正・透明な取引の枠組み・ルールの整備
を目指した一連の制度改革の総称です。
金融商品取引法の改正はこの総仕上げとして位置づけられました。この他にも、同時期に進められていた各国の金融商品(各投資商品)に横断的な規制をおこなう時流に乗っ取り、2006年の改正もその流れの延長線上に位置付けられています。
おわりに
このように金融商品取引法は、前身である証券取引法からその性格を大きく変え、金融取引に関する包括的な法律としての性格を強くしています。個人投資家が通常の取引をする限りでは金融商品取引法の影響を感じる場面はほとんどありませんが、その大まかな内容を把握しておくことは取引のリスクを減らす上でも欠かせないと言えるでしょう。
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